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連載小説『爛熟』11

  だが、僕は邪だ。自身の運命に抗するように週末ともなれば女を買い、に奔る。ひとのことはとかく冷淡に誹謗するくせに自分には極めて甘い性質の一事例。言い募ってくる女も居るが、たまにじゃれてやるだけで一緒に暮らそう、だなどとは毛頭、想わない。異性を愛すること、他人にこの魂を委ねてしまうこと、他者に気持ちを砕いてみせる、いわば胸襟を開くという所作、ただ寂しいと寄り添うてしまえるその様、僕はそのどれをも自身、この身を投げ打って最期まで演じきれる自身は無いけれど、そのそぶりさえほんの少しでも見せようものなら、女はもう、まるで鬼の首でも捕まえたかのような喜色満面の哄笑を湛え、「私に出来ることがあったらなんでも言って。」などと途轍もないことを言ってくる。だから、厄介だ。だから、この世情はまやかしだと感じてしまう。誰も彼もが、異性との交流だけで癒されたい、などと想っているのだとしたら、それこそ短絡という奴、じゃあないか。とは言っても肉欲に対する性的衝動は抑えがたく、僕は週末ともなれば、車を駆るわけだ。この同情の余地が微塵もない己の想起矛盾。矛は収められるべき鞘があってこその、矛、なのにいまの僕にはその鞘さえ捨ててしまってどこへと置き去りにしてしまったのやら。。連綿と物事を考えられるうちは、まだいいさ。もう、なあんにも考えたくもない、と思考したならば僕はいつまでも半透明なガラス細工の可憐な首飾りのように、自身の心根にぴったりと触れ添うていられる、だろうか。あやふやでしかない。
 父が喉に飲み込んだものを咀嚼できずに仮死状態に陥ったとの報を看護師からの電話によって聞きいったのは、新年もまだ指折り日数、数えられる、そんな腹中、夜明けの朝のことであった。
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Appendix

Literature sight-seeing『風、早暁記。』

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introduction

風友仁(かぜともひと)

Author:風友仁(かぜともひと)
 
 沖に出たらば暗いでせう、
 櫂から滴垂る水の音は
 昵懇しいものに聞こえませう、
 ――あなたの言葉の杜切れ間を。

 月は聴き耳立てるでせう、
 すこしは降りても来るでせう、
 われら接唇する時に
 月は頭上にあるでせう。

 あなたはなほも、語るでせう、
 よしないことや拗言や、
 洩らさず私は聴くでせう、
 ――けれど漕ぐ手はやめないで。
   中原中也『湖上』拠り 
*『爛熟』この書を我が畏敬のひとり、中原中也の御霊に捧ぐ。


*an information desk *
皆々様の厚きご支持、心より傷み入ります。有難うございます。

*新たなる風の舞、ここに興つ。*
*謹告*当オンライン小説サイトでは、大変申し訳ございませぬが一切のコメント・トラックバック等は諸事情に拠り、お断りさせてもらっております。どうぞご了承くださいませ。*尚、この小説に関する全ての帰属権並びに著作権は筆者、風友仁にございます。個人で愉しむ以外のコピー、それらを商用の配布等に用いたりする行為は法律で禁じられておりますので是非、お止めくださいませ。現在公開中のものにつきましては、何の予告もなく、加筆、訂正、語彙、言い回しの変更、削除等行われる場合がございますが、それらについての更新情報等は行っておりませんのであらかじめご了承下さいませ。
*今後とも『爛熟』並びに風友仁の綾織る世界観にどうぞご支持、ご声援のほどを、宜しくお願い致します。
 
  2006・1・15 心を込めて。
         風友仁

*連載小説『爛熟』に就きまして*
 この物語は、空想の物語であり、一部事実を基に脚色なされておりますが、登場する人物及び団体の名称等、ある特定の人物及び団体等を示唆、揶揄、誹謗、中傷する類いのものではありません。飽くまでも架空の物語としてお読みくださいませ。またもしや名称、団体名等が同じでも飽くまでも架空の物語でありますのでその点、どうぞお知りおき下さいませ。皆様のご理解の程、何卒宜しくお願い致します。著者・風友仁


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