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連載小説『爛熟』12

 何をしようというわけでもないが、男は長い間、在る民間慈善事業団体のスポークスマンを任じてきた。在京時分、何たびか断りを願ったのだけれど、公私に渡ってお世話になったさるひとのたっての希望ということもあって任じてきたわけだ。顔をきっと背けない、集い、見上げた一群に男は詩人として紹介される次第なのだが、その本性、実体なるものは果たしていかなるものなのか。文学を愛で、詩を織る姿が最も彼の本性に近いのか、或いはこの世情を呪い、他者の生活を覗き見するかのような生態をこれでもかこれでもかと非難する姿が、それこそ相応しいのか、或いはまた女を買い、一時の享楽に溺れ、自身の心根を慰める姿勢こそ、また彼の最もな本性、なのだろうか、いやいや或いは実父の危篤に際し、一心に先祖に祈りを捧げる敬虔な立ち居振る舞いこそ本来の彼を象徴しているのか、
 男は、その問いになんと答えることだろう?・・・・・・、
 男は氷点下を記録した日中の昼下がり、スポークスマンとしての勤めをしっかと全うしようと佇んでいた。マイクを向けられ、声を訥々と発していく。読み物でよく見かけるかのような喩えに、「まるでその両の手、両の足が自分のものでないかのような」寒さでかじかんだ身体を震わせながら、声を発する。
 と、次第に、「まるでその両の手、両の足が自分のものでないかのような」感覚から、もうひとりの自身が、いままさにマイクを持ち語っている男を見定めているかのような勘考が起こってきて、不可思議な心持ちになる。
 「わたしたちに出来ることは、ただひとつです。」
 「いま在るわたしたちは、いま生きているわたしたちだということを、普段、感じずに生きている。」
 「目に見えぬ何物かに生かされながら生きており、」
 「ですが、この世には、その目に見えぬ何物かによって翻弄され、屈折の人生を歩んでいる人々も居るのです。」 
 この己は、この後、何処へ向かおうとしているのか、
 ・・・・・・想い至りたくもない。
 男はさめざめしい程の情けない感慨を抱いて、その問いには遂に答えずじまいで、顔を覆い、横を向いてしまった。
 もう、その後、この日、何を問いかけても男は顔を覆った、ままなのであろう、そのような横顔を男は滲ませていた。
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Appendix

Literature sight-seeing『風、早暁記。』

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introduction

風友仁(かぜともひと)

Author:風友仁(かぜともひと)
 
 沖に出たらば暗いでせう、
 櫂から滴垂る水の音は
 昵懇しいものに聞こえませう、
 ――あなたの言葉の杜切れ間を。

 月は聴き耳立てるでせう、
 すこしは降りても来るでせう、
 われら接唇する時に
 月は頭上にあるでせう。

 あなたはなほも、語るでせう、
 よしないことや拗言や、
 洩らさず私は聴くでせう、
 ――けれど漕ぐ手はやめないで。
   中原中也『湖上』拠り 
*『爛熟』この書を我が畏敬のひとり、中原中也の御霊に捧ぐ。


*an information desk *
皆々様の厚きご支持、心より傷み入ります。有難うございます。

*新たなる風の舞、ここに興つ。*
*謹告*当オンライン小説サイトでは、大変申し訳ございませぬが一切のコメント・トラックバック等は諸事情に拠り、お断りさせてもらっております。どうぞご了承くださいませ。*尚、この小説に関する全ての帰属権並びに著作権は筆者、風友仁にございます。個人で愉しむ以外のコピー、それらを商用の配布等に用いたりする行為は法律で禁じられておりますので是非、お止めくださいませ。現在公開中のものにつきましては、何の予告もなく、加筆、訂正、語彙、言い回しの変更、削除等行われる場合がございますが、それらについての更新情報等は行っておりませんのであらかじめご了承下さいませ。
*今後とも『爛熟』並びに風友仁の綾織る世界観にどうぞご支持、ご声援のほどを、宜しくお願い致します。
 
  2006・1・15 心を込めて。
         風友仁

*連載小説『爛熟』に就きまして*
 この物語は、空想の物語であり、一部事実を基に脚色なされておりますが、登場する人物及び団体の名称等、ある特定の人物及び団体等を示唆、揶揄、誹謗、中傷する類いのものではありません。飽くまでも架空の物語としてお読みくださいませ。またもしや名称、団体名等が同じでも飽くまでも架空の物語でありますのでその点、どうぞお知りおき下さいませ。皆様のご理解の程、何卒宜しくお願い致します。著者・風友仁


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