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連載小説『爛熟』21

 魔を射る・・・僕は口惜しさでいっぺんにこの血が滾(たぎ)るような想いがした。知人の小説家から告げられて、在る文芸雑誌の批評家同士の対談録を読んだところ、僕の詩文に対する言及がなされており、「此の頃の彼は、なんだか身辺穏やか、じゃあないというか、澱(よど)みがフラフラしていて良いものを編んでないね」というくだりに及んで、のこと。僕は歯がゆさと怒りで、僕の中の「悪魔という名の魔を射抜かれた」想いがして口惜しさで激怒しかけた。かの川端と太宰の論争じゃあ、あるまいし。まだこんなことを言う奴が居るのか。すぐさまこの批評家に抗議してやろうかとも考えたが、詮無いことと自分を努めて努めて諌(いさ)めつつ、この懐で「ええい、処理してしまえ」と断罪、した。
 恒にこの腹中、葛藤はある。故に脆い、のだ。ひとの意見が気にかかる。物書きなんてこの程度の類いに過ぎない。まるで日中、家宅を覗かれているようなものさ。だが、それがこの心を売る作家の宿命ともいうやつなのだろうから、本当は一々、怒(いか)っても仕方無いことなのではあろうけれど・・・、宿業(しゅくぎょう)だ。宿業さ。これからもこの宿業とやんわりゆんわり付き合ってゆかねばならぬのかと想うと、もう、もう、僕はこの生に厭(あ)いてしまう。厭いてくる。
 ネットを開いた。メールを確認した。「駅まで送ってくださって、その節はほんとうに有難うございました。」その長い件名に、おやっと心が弾けてすぐさま本文を紐解いて、ほっと溜息を漏らした。あの少女からのメ-ルであった。あの時、せがまれてアドレスを教えたが、ついぞ初めての少女からの交信であった。僕は、無声の只中に小鳥が小さく囀(さえず)っているかのような慰みをそこに感じてしまい、この己の柔な精神を糾(ただ)す前に、ひとり物思いに耽(ふけ)ってしまった。「もうすぐ春休みです。」そこからの一文が僕の眼前に拡がった時、僕は僕の書いたものなどよりか一層倍温かみのあるそのひとことふたことみことに、文章の襞(ひだ)を見る、想いがして困惑、した。「いや、何、僕なんかより立派に良いものを、・・・」僕は穢(けが)れていた。僕は取り返しのつかない穢れの道程を今日まで繰言と煩瑣な日常という、どこか裸足で出歩くかのような逼迫感に、恒に追われているような感覚の中で生きてきた。そんな少女の文章に少し、この瞼に熱くなるものを湛えてもよいではないかと、僕は僕をまた慰めてみた。それがたとえ間違っている所作だとしても、僕にはいまや顧みる余裕、など微塵(みじん)も無い。
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Appendix

Literature sight-seeing『風、早暁記。』

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introduction

風友仁(かぜともひと)

Author:風友仁(かぜともひと)
 
 沖に出たらば暗いでせう、
 櫂から滴垂る水の音は
 昵懇しいものに聞こえませう、
 ――あなたの言葉の杜切れ間を。

 月は聴き耳立てるでせう、
 すこしは降りても来るでせう、
 われら接唇する時に
 月は頭上にあるでせう。

 あなたはなほも、語るでせう、
 よしないことや拗言や、
 洩らさず私は聴くでせう、
 ――けれど漕ぐ手はやめないで。
   中原中也『湖上』拠り 
*『爛熟』この書を我が畏敬のひとり、中原中也の御霊に捧ぐ。


*an information desk *
皆々様の厚きご支持、心より傷み入ります。有難うございます。

*新たなる風の舞、ここに興つ。*
*謹告*当オンライン小説サイトでは、大変申し訳ございませぬが一切のコメント・トラックバック等は諸事情に拠り、お断りさせてもらっております。どうぞご了承くださいませ。*尚、この小説に関する全ての帰属権並びに著作権は筆者、風友仁にございます。個人で愉しむ以外のコピー、それらを商用の配布等に用いたりする行為は法律で禁じられておりますので是非、お止めくださいませ。現在公開中のものにつきましては、何の予告もなく、加筆、訂正、語彙、言い回しの変更、削除等行われる場合がございますが、それらについての更新情報等は行っておりませんのであらかじめご了承下さいませ。
*今後とも『爛熟』並びに風友仁の綾織る世界観にどうぞご支持、ご声援のほどを、宜しくお願い致します。
 
  2006・1・15 心を込めて。
         風友仁

*連載小説『爛熟』に就きまして*
 この物語は、空想の物語であり、一部事実を基に脚色なされておりますが、登場する人物及び団体の名称等、ある特定の人物及び団体等を示唆、揶揄、誹謗、中傷する類いのものではありません。飽くまでも架空の物語としてお読みくださいませ。またもしや名称、団体名等が同じでも飽くまでも架空の物語でありますのでその点、どうぞお知りおき下さいませ。皆様のご理解の程、何卒宜しくお願い致します。著者・風友仁


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