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連載小説『爛熟』27

  運命(さだめ)とは浪漫的、なものか?、赤い糸の伝説であったり、主の配罪に拠る業のようなもの、宿命とも言うべき出遭い、別れ・・・だがひとは歳を重ねるごとに、このようないわば見えざる世界への連想、空想を次第に想わなくなる。厳しい現実に晒(さら)されて、自身の技量だとか天賦(てんぷ)の才の無さ、だとかそういった生き様にすぐさま投影するかのような事態に陥って挫けてしまうから。「僕は駄目だなあ」「私ってなあーんにも出来ない」自ら、その扉を固く閉ざしてしまうからますます、運命などという言葉は遠くへと置き去りにしてしまう。自分でこうだ、と決めた空間は、それ以上なんら帯びない空間、でしかない。

 少女は、どうであったろう。運命という想いを、その心に刻んでみた。逢いたいと願う詩人に出遭うことこそ、運命というものであったか、どうか。なんら変わり映えのしない学園生活。そこに、詩人という名の水滴をひょいと投げる。輪は少しずつだがゆっくりと波紋を拡げ、何らかの紋章を想起させようか、輪は三重となり、四重となり五重となり、やがて溢れ出る大河と成す、であろう?・・・・・一片の花はただ一片の花でしかない。だが、その一片の花にもめしべが有り、或いはおしべが有り、更にその中央には花芯(かしん)が有るのだ。少女は憂えた。その全身で憂えた。少女の花芯ともいうべき心臓部が、どくどくと流れゆく血の激流部が、高鳴れば高鳴るほど、少女はその詩人に出遭えることこそ、運命、そのものであると呼称するであろうか・・・。

 文の誘(いざな)いは再び、少女の胸に跪(ひざまづ)いた。女学校帰り、重い鞄を下ろすやいなやの出来事であった。ドアフォンが鳴って、同性らしき声が、した。「ごめんくださーい」公団の、五階の、狭く窮屈な出入り口に、ミラー越しに覗けば四、五十代、中年の女性がふたり、こちらを窺(うかが)っている。少女は鎖で繋がれた距離間分のドアー越しに、ある小雑誌を受け取ったまでである。「何か?」「あら、お嬢ちゃんね。パパとかママは居ないのかしら?」「いえ、まだ帰ってきていないんです」「そう?・・・じゃあ仕方無いわね。宜しかったら、こちらでもパパかママに渡してもらいたいの」「・・・判りました。」その出来事は至極、あっさり終わったのだ。受け取った小雑誌の表には『わかば』とあってその下には『〇〇会慈善事業評議会』との名称が記されている。「なあんだ」という顔になる少女。小さな溜息と共に何気無く、目録をペラペラ捲(めく)っていたが、そこに少女は、在(あ)る男の肖像写真を認めてはっと息を呑んだ。声を一瞬間、飲み込んだ。口のうらで聞こえない叫びを放った。詩人・美咲優治「誓いの言葉」。二度目の文の誘いは、そうして少女を再び野外へと駆けさせる装いを擁していたのであった。
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Appendix

Literature sight-seeing『風、早暁記。』

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introduction

風友仁(かぜともひと)

Author:風友仁(かぜともひと)
 
 沖に出たらば暗いでせう、
 櫂から滴垂る水の音は
 昵懇しいものに聞こえませう、
 ――あなたの言葉の杜切れ間を。

 月は聴き耳立てるでせう、
 すこしは降りても来るでせう、
 われら接唇する時に
 月は頭上にあるでせう。

 あなたはなほも、語るでせう、
 よしないことや拗言や、
 洩らさず私は聴くでせう、
 ――けれど漕ぐ手はやめないで。
   中原中也『湖上』拠り 
*『爛熟』この書を我が畏敬のひとり、中原中也の御霊に捧ぐ。


*an information desk *
皆々様の厚きご支持、心より傷み入ります。有難うございます。

*新たなる風の舞、ここに興つ。*
*謹告*当オンライン小説サイトでは、大変申し訳ございませぬが一切のコメント・トラックバック等は諸事情に拠り、お断りさせてもらっております。どうぞご了承くださいませ。*尚、この小説に関する全ての帰属権並びに著作権は筆者、風友仁にございます。個人で愉しむ以外のコピー、それらを商用の配布等に用いたりする行為は法律で禁じられておりますので是非、お止めくださいませ。現在公開中のものにつきましては、何の予告もなく、加筆、訂正、語彙、言い回しの変更、削除等行われる場合がございますが、それらについての更新情報等は行っておりませんのであらかじめご了承下さいませ。
*今後とも『爛熟』並びに風友仁の綾織る世界観にどうぞご支持、ご声援のほどを、宜しくお願い致します。
 
  2006・1・15 心を込めて。
         風友仁

*連載小説『爛熟』に就きまして*
 この物語は、空想の物語であり、一部事実を基に脚色なされておりますが、登場する人物及び団体の名称等、ある特定の人物及び団体等を示唆、揶揄、誹謗、中傷する類いのものではありません。飽くまでも架空の物語としてお読みくださいませ。またもしや名称、団体名等が同じでも飽くまでも架空の物語でありますのでその点、どうぞお知りおき下さいませ。皆様のご理解の程、何卒宜しくお願い致します。著者・風友仁


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