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連載小説『爛熟』3

  時を経て、男はもう四十を目前としていた。やんわりといやゆんわりと?これも自分らしげさと男は、自身の為では無い詩を編んでみた。その歳で愛しいと想えた女に対して、朗々(ろうろう)と謳いあげるかのような詩を、だ。結局、その男には詩を書く、という行為しか、残されていなかったわけだ。だが男は満足であった。俗世間の卑属(ひぞく)さを恨めしく想う、でもなし、いま現在の自身の境遇を嘲哂(あざわら)う、わけでもなし、若き頃幼き日々夢見た明日、そのいずれにも属してはいまいだろうが、まぁいいさと男はどこか風の吹くまま、気のそそるまま、けれど真摯(しんし)にその瞼(まぶた)を深く閉じて考え考え感じつつ感じつつ、一行一行、想いの丈を綾織(あやお)っていった。それは「なんと至福の時であった」ことだろう。あとからあとから湧水(わきみず)の如く言葉は漏れ出す、溢れだす。二十代の前半ぐらいでこのてのものが編めたならば俺のこれまでの人生も、ちっとは変わっていただろう、いや爽快だったろうなどと想えるほどの快調ぶりで、あっという間にその詩は百行を超えてしまった。男は苦笑い、した。そうしてじっと思案して忽(たちま)ち想い立った、或ることを実践しようと立ち上がった。隣町の雑貨屋で購入しておいた和紙に墨で、その詩の文句を連綿とゆっくりと写し始めた。少々疲れた。やがてぐったりとした。もう、夜が明けようとしていた。陽が登り始めた。樹々が揺れた。月はされど隠れぬ。男は疲れ果てて写した和紙をそのままに、寝た。まだ射していた。何が?、陽、だよ。目が覚めて起き上がるまま男はじぃっとその、和紙を見た。(・・・この詩は送るまい )男は、そう決心した。和紙を束ねてぐちゃぐちゃにして庭先で燃やした。詩人は、燃え残った紙片までくべてしまうと、部屋に戻り冷蔵庫を開け昨日、手づかづのおかずを喰らい、茶を啜った。煙草に火をつけた。どうしようもねえなぁ・・・・・・男は涙せずにはいられなかった。
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Appendix

Literature sight-seeing『風、早暁記。』

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introduction

風友仁(かぜともひと)

Author:風友仁(かぜともひと)
 
 沖に出たらば暗いでせう、
 櫂から滴垂る水の音は
 昵懇しいものに聞こえませう、
 ――あなたの言葉の杜切れ間を。

 月は聴き耳立てるでせう、
 すこしは降りても来るでせう、
 われら接唇する時に
 月は頭上にあるでせう。

 あなたはなほも、語るでせう、
 よしないことや拗言や、
 洩らさず私は聴くでせう、
 ――けれど漕ぐ手はやめないで。
   中原中也『湖上』拠り 
*『爛熟』この書を我が畏敬のひとり、中原中也の御霊に捧ぐ。


*an information desk *
皆々様の厚きご支持、心より傷み入ります。有難うございます。

*新たなる風の舞、ここに興つ。*
*謹告*当オンライン小説サイトでは、大変申し訳ございませぬが一切のコメント・トラックバック等は諸事情に拠り、お断りさせてもらっております。どうぞご了承くださいませ。*尚、この小説に関する全ての帰属権並びに著作権は筆者、風友仁にございます。個人で愉しむ以外のコピー、それらを商用の配布等に用いたりする行為は法律で禁じられておりますので是非、お止めくださいませ。現在公開中のものにつきましては、何の予告もなく、加筆、訂正、語彙、言い回しの変更、削除等行われる場合がございますが、それらについての更新情報等は行っておりませんのであらかじめご了承下さいませ。
*今後とも『爛熟』並びに風友仁の綾織る世界観にどうぞご支持、ご声援のほどを、宜しくお願い致します。
 
  2006・1・15 心を込めて。
         風友仁

*連載小説『爛熟』に就きまして*
 この物語は、空想の物語であり、一部事実を基に脚色なされておりますが、登場する人物及び団体の名称等、ある特定の人物及び団体等を示唆、揶揄、誹謗、中傷する類いのものではありません。飽くまでも架空の物語としてお読みくださいませ。またもしや名称、団体名等が同じでも飽くまでも架空の物語でありますのでその点、どうぞお知りおき下さいませ。皆様のご理解の程、何卒宜しくお願い致します。著者・風友仁


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