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連載小説『爛熟』第一章1~12

  『爛熟』第一章 風友仁
『a mature 』/爛熟<RANJYUKU>・part1 an author;Tomohito Kaze
 
  1
 その女は、僕に「愛をおくれよ」と言った。どこかで聞いたかのようなその言い回しに、ちょっと可笑(おか)しみが漂っている。にやけているのではない。不確かな真顔、でもない。これはどうしたものかというような、憔悴(しょうすい)しきった、やはり顔を繕(つくろ)っている、はずだろう、なのに僕は弱った。心底、困った。腹中(ふくちゅう)、辟易(へきえき)してしまった。惑った。つまらぬことに片足をもがれるぞ、そんな想いまでして背筋がぞくりと這い上がった。
 僕はただ一個の詩人でしかあらず、そんな二、三度、乳房をまさぐったくらいの女に、どうという感慨もなく、だけれど煩瑣な日常において、苦しまなければならぬ人種の人間はやはり彼女のような立場の人間、なのであろうし、その女はただ、そういう主義、主張を強弁したとしてもなんら批判されうる対象でもなかろうと、どうしたものか、僕の平常、僕が僕自身に抱く一番優柔不断な心持ちが起こって、その女を清く正しく助けることにした。
 とにかく抱いてやれば良い、のだ。それこそが美しい。それこそが、この女
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Literature sight-seeing『風、早暁記。』

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introduction

風友仁(かぜともひと)

Author:風友仁(かぜともひと)
 
 沖に出たらば暗いでせう、
 櫂から滴垂る水の音は
 昵懇しいものに聞こえませう、
 ――あなたの言葉の杜切れ間を。

 月は聴き耳立てるでせう、
 すこしは降りても来るでせう、
 われら接唇する時に
 月は頭上にあるでせう。

 あなたはなほも、語るでせう、
 よしないことや拗言や、
 洩らさず私は聴くでせう、
 ――けれど漕ぐ手はやめないで。
   中原中也『湖上』拠り 
*『爛熟』この書を我が畏敬のひとり、中原中也の御霊に捧ぐ。


*an information desk *
皆々様の厚きご支持、心より傷み入ります。有難うございます。

*新たなる風の舞、ここに興つ。*
*謹告*当オンライン小説サイトでは、大変申し訳ございませぬが一切のコメント・トラックバック等は諸事情に拠り、お断りさせてもらっております。どうぞご了承くださいませ。*尚、この小説に関する全ての帰属権並びに著作権は筆者、風友仁にございます。個人で愉しむ以外のコピー、それらを商用の配布等に用いたりする行為は法律で禁じられておりますので是非、お止めくださいませ。現在公開中のものにつきましては、何の予告もなく、加筆、訂正、語彙、言い回しの変更、削除等行われる場合がございますが、それらについての更新情報等は行っておりませんのであらかじめご了承下さいませ。
*今後とも『爛熟』並びに風友仁の綾織る世界観にどうぞご支持、ご声援のほどを、宜しくお願い致します。
 
  2006・1・15 心を込めて。
         風友仁

*連載小説『爛熟』に就きまして*
 この物語は、空想の物語であり、一部事実を基に脚色なされておりますが、登場する人物及び団体の名称等、ある特定の人物及び団体等を示唆、揶揄、誹謗、中傷する類いのものではありません。飽くまでも架空の物語としてお読みくださいませ。またもしや名称、団体名等が同じでも飽くまでも架空の物語でありますのでその点、どうぞお知りおき下さいませ。皆様のご理解の程、何卒宜しくお願い致します。著者・風友仁


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