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連載小説『一人静』2

 僕は生まれつきの、胃腸障害に悩まされ続けていた。10代の時分から、けれどどこか大言壮語したり、唾吐き、激したことを言ったりするものだから、そういう感じにはとても想われがたかったけれど、痛みがひどくて何度かそれなりの日数、休むだとか、疼くまって一日中寝ているだとか、けっして身体の丈夫な方ではなかった。あの頃、僕は十二指腸潰瘍が穿孔し腹膜炎を併発、救急車で運ばれて緊急手術を施すほどの、入院騒ぎを演じてしまった。実際、心細い限りで、気持ち的には、ひじょうに後ろ向きなことばかり考えられてしまって、ほんとうにやるせない感情が先に立つ。当時、大阪に就職していた妹が、両親の命を受け、駆けつけた際、この時のことを後年、述懐し「お兄ちゃんの顔を人目見たら、まるで他人かと見まがうほどの痩せようで」妹は病室で、それこそ人目を憚らず泣き出すほどの自身の衰弱ぶりであったようだ。四人部屋とはいえ、同室の方々も病人なのだから、けっしてけらけら、皆、笑いに講じたりしているわけではない。窓辺に見える東京大学の講堂が恨めしかった。
 とそこへ、以外というか、かの彼女がお見舞いに来てくれた。何故、以外かと言えば、お恥ずかしい話しだけれど、僕はこの病気をする以前、彼女に想いの丈を言い募り、やんわりと否定されていたから。その後いろいろと反転すべき事情もあって、実は1年振りの再会だったのです。僕は素直に嬉しかった。ベッドに横たわる僕に優しく語り掛ける彼女は、以前より一層神々しく、壮麗な異性に想えた。僕はこのとき余程、この再会が嬉しかったのでしょう、今度いつ逢えるか判らない、彼女との別れが惜しかったのか、点滴台を押してまで、待合室を経ての語らい、そして病院入り口ロビーまで、彼女を見送りました。
 彼女は別れ際、はっきりと僕にこう、言いました。「あなたはきっと元気になるわよ。だってあなたには黄泉の国から、川端康成という偉大な文豪が見守っていてくださるのだから」僕はそんな大袈裟な言い回しにちょっと苦笑せざるをえなかったけれど、微笑を湛えて、そう言った彼女の目」は真剣そのものだった。僕は彼女をいつまでもじっと見つめていたかった、だのに彼女は病院のロビーから程なくして僕の視界から消えてしまった。まだおもがゆい感情が僕の心根に残っている頃の出来事、だった。

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Appendix

Literature sight-seeing『風、早暁記。』

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introduction

風友仁(かぜともひと)

Author:風友仁(かぜともひと)
 
 沖に出たらば暗いでせう、
 櫂から滴垂る水の音は
 昵懇しいものに聞こえませう、
 ――あなたの言葉の杜切れ間を。

 月は聴き耳立てるでせう、
 すこしは降りても来るでせう、
 われら接唇する時に
 月は頭上にあるでせう。

 あなたはなほも、語るでせう、
 よしないことや拗言や、
 洩らさず私は聴くでせう、
 ――けれど漕ぐ手はやめないで。
   中原中也『湖上』拠り 
*『爛熟』この書を我が畏敬のひとり、中原中也の御霊に捧ぐ。


*an information desk *
皆々様の厚きご支持、心より傷み入ります。有難うございます。

*新たなる風の舞、ここに興つ。*
*謹告*当オンライン小説サイトでは、大変申し訳ございませぬが一切のコメント・トラックバック等は諸事情に拠り、お断りさせてもらっております。どうぞご了承くださいませ。*尚、この小説に関する全ての帰属権並びに著作権は筆者、風友仁にございます。個人で愉しむ以外のコピー、それらを商用の配布等に用いたりする行為は法律で禁じられておりますので是非、お止めくださいませ。現在公開中のものにつきましては、何の予告もなく、加筆、訂正、語彙、言い回しの変更、削除等行われる場合がございますが、それらについての更新情報等は行っておりませんのであらかじめご了承下さいませ。
*今後とも『爛熟』並びに風友仁の綾織る世界観にどうぞご支持、ご声援のほどを、宜しくお願い致します。
 
  2006・1・15 心を込めて。
         風友仁

*連載小説『爛熟』に就きまして*
 この物語は、空想の物語であり、一部事実を基に脚色なされておりますが、登場する人物及び団体の名称等、ある特定の人物及び団体等を示唆、揶揄、誹謗、中傷する類いのものではありません。飽くまでも架空の物語としてお読みくださいませ。またもしや名称、団体名等が同じでも飽くまでも架空の物語でありますのでその点、どうぞお知りおき下さいませ。皆様のご理解の程、何卒宜しくお願い致します。著者・風友仁


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