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連載小説『爛熟』42

 彼らはきっと僕が詩を編む、という概念のほかに居る、僕の詩を愛でるという、観念のきっとその惑いのほかに在る・・・寺島は、当時既に大家として世に名を轟かせていた洋画家を母に持つ、その子息で身のこなし、佇まい、その会話の節々に到るまで何よりも鼻持ちならず、一見して僕に生理的とも言えよう嫌悪感を漂わす男だった。生まれも素性も違う。さも当たり前過ぎる、この当然の隔たり。既に始まりからして、そう、だったのだ。僕とは相容れない宿業を背負った男だった、ということなのだろう。だが首座を始め、皆、安穏とは付き合えない立場の男、だったらしく、それは当座の劇団、その運営資金が彼の懐具合でなんとでも切り盛りされていたという事実からして・・・。「よくあることさ」と、のちに知る事実ではあろうに、ああ、そういうことは、あまたある、誰ひとり把握しかねるほどの無数の小劇団乱立の時代にあっては、生き延びていく為には甘んじて受けねばならぬ、いわば「所作」なのだといまさらなら、平気で受け流していたことだろうに、やはり当時の僕には何かしらどす黒い裏事情が感じられて、聞き及んで、やはりいい気持ちではいられなかった覚えがある。世情の「当たり前さ」と、自身の「当たり前さ」との、このどうしようもない、隔絶感・・・。皆、誰ひとり、彼の一言(いちげん)に逆らえない風で、のちに僕は「ああ、なるほど」と高坂との語らいでそのような振る舞いがどこから生まれ、どこから来ているのか、思い当たるわけだけれど、普段、安穏とさも傍目からは見えたろう僕が何故に、あんなにもこの神経を逆なでしてしまうほど、彼に苛立ちを覚えてしまったのか?。ただたんに、生理的な感覚?感性の相違?執着する物事の脅威としか答えられぬ遠過ぎる距離感?言葉は時としてひとを排他、する。ごまかさず・・・

 ・・・そう、答えはひとつしかなかったのだ。僕は彼女を愛し始めていた。そうしてその狭間に彼がいた。玲子との障壁として寺島が存した?僕がその後、僕が望まない僕の出現?を演じてしまったのか、どうか?
 僕は奴と対面して、すぐに「この男だけには屈服してはならぬ」何かを嗅ぎ取っていたはずだ。当時、僕には異性を前にして、飾るものは何も無かったと、胸を張れる。精神的にはさも虚弱であったろうけれど、僕の内面はさやかにさもさやかに晴れていた、筈だ。奴は、そういう飾りをふんだんに己の身にまとった男だった。僕は奴、彼と対峙、した。その輪の中に、高坂が己のものした、在る戯曲を投げ込んだ、事態はそこから急変を遂げていく。
 『爛熟』第一章
 『爛熟』第二章
 『爛熟』第三章
 『爛熟』第四章


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Appendix

Literature sight-seeing『風、早暁記。』

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introduction

風友仁(かぜともひと)

Author:風友仁(かぜともひと)
 
 沖に出たらば暗いでせう、
 櫂から滴垂る水の音は
 昵懇しいものに聞こえませう、
 ――あなたの言葉の杜切れ間を。

 月は聴き耳立てるでせう、
 すこしは降りても来るでせう、
 われら接唇する時に
 月は頭上にあるでせう。

 あなたはなほも、語るでせう、
 よしないことや拗言や、
 洩らさず私は聴くでせう、
 ――けれど漕ぐ手はやめないで。
   中原中也『湖上』拠り 
*『爛熟』この書を我が畏敬のひとり、中原中也の御霊に捧ぐ。


*an information desk *
皆々様の厚きご支持、心より傷み入ります。有難うございます。

*新たなる風の舞、ここに興つ。*
*謹告*当オンライン小説サイトでは、大変申し訳ございませぬが一切のコメント・トラックバック等は諸事情に拠り、お断りさせてもらっております。どうぞご了承くださいませ。*尚、この小説に関する全ての帰属権並びに著作権は筆者、風友仁にございます。個人で愉しむ以外のコピー、それらを商用の配布等に用いたりする行為は法律で禁じられておりますので是非、お止めくださいませ。現在公開中のものにつきましては、何の予告もなく、加筆、訂正、語彙、言い回しの変更、削除等行われる場合がございますが、それらについての更新情報等は行っておりませんのであらかじめご了承下さいませ。
*今後とも『爛熟』並びに風友仁の綾織る世界観にどうぞご支持、ご声援のほどを、宜しくお願い致します。
 
  2006・1・15 心を込めて。
         風友仁

*連載小説『爛熟』に就きまして*
 この物語は、空想の物語であり、一部事実を基に脚色なされておりますが、登場する人物及び団体の名称等、ある特定の人物及び団体等を示唆、揶揄、誹謗、中傷する類いのものではありません。飽くまでも架空の物語としてお読みくださいませ。またもしや名称、団体名等が同じでも飽くまでも架空の物語でありますのでその点、どうぞお知りおき下さいませ。皆様のご理解の程、何卒宜しくお願い致します。著者・風友仁


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